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コメントへの返信と謝罪
まず、謝罪から入らせていただきます。
不要な方は次の黄色タイトルまで飛ばしてください。
この動画で、「悪魔の証明では?」という意見を頂戴しました。
私が述べたかったのはそういうことではありません。
(そう伝わってしまったのは私の責任ですが…)
それらしさや、その時の話題性だけでどちらが正しいとするのではなく、
自分である程度納得できる答えを考えるべきで、それをせずにただ非難をするのはおかしいという話です。
そもそも、あるかどうかすら調べていない、(私を含む)素人が、
それを調べている専門家に対して、嘘つき呼ばわりはおかしいとは思いませんか?
(私のような)素人であっても、自分で何かを調べるとか、心理学に明るい人に聞いてみるとか
あるいは、何冊かの専門書籍が販売されていますので、それを読んで知識を深めるのもいいでしょう。
と書いてきましたが、動画で私の説明が足りなかったという点も大きいと思います、
実際問題、サブリミナル実験というものはそこまで多くはないですが行われています。
サブリミナル感情プライミング効果といったものもあります。
私が多分伝えたかったのは
実験結果で「ある」と言っているのに、「ない」というのはさすがにおかしいでしょう。
「ある」ことを「ない」というのであれば、追試験を行えばいいだけの話です。
「○○の統制が取れていなかったため、先行研究ではこのような結果となったが…」
という実験を行えば、「別の要因が影響していた」、
つまり「実験が誤っていた(その実験内容ではサブリミナルは生じない)」ことの証明になりえます。
だと思うんですね、(その実験について取り上げなかったのが最大のミス)
そういった前提で話を行っていたのが、おそらく、このコメントを頂いた経緯となると思います。
言葉が足りず、大変申し訳ございませんでした。
解説動画制作において解説が不十分であったこともお詫び申し上げます。
今後紹介するつもりでいますが、
「サブリミナル効果の科学‐無意識の世界では何が起こっているか‐」
という専門書があります(Twitter見てくださってる方は購入した際に写真をうpしたかと思います)。
執筆者のうちの一人は知っている方なのでまず信頼できる書籍だと思います。
学術的観点からサブリミナル効果の真偽を考える、といった内容の本となっており、
様々な実験や、多種多様な心理学とのかかわりを検討しています。
この本の終わりの方174ページにこう締めくくられています。
サブリミナル効果は,確かに存在する場合があると言えるが,それが,どのような場合に存在するかについては,十分に解明されていない。
この本を読むと、いくつもの論拠、根拠と共に意見が示されています。
学術書というものは本来、話題作りのために本を書いているわけではないのです。
「サブリミナル効果、嘘だった!!ジェイムズ・ヴィカリーの独白!!」
なんて記事タイトルだったら、そりゃみんな食いつくでしょう。
そして「サブリミナル効果なんて嘘だったんだ」と極論に片付けるわけですね。
「一切効果がない」って言ってる人もチラホラ見かけますし、
陰謀論とかの人だと
「実は効果がありすぎるために、倫理規定を制定したのです、効果がないのなら規定を作る必要はないはずです!!」
なんて言い出すのかもしれません(知りませんけど)。
そこで、何度も言いますが「一度立ち止まって、考える」という癖をつけるべきである。
という話をしているのであって、
「反証が用意できないなら結局バカ」といっているわけではないんですね。
考えずに脊髄反射で反応するべきではない、というだけのお話なのです。
コカコーラ実験が嘘だったという話を聞いて、
=サブリミナル効果も嘘だった
と思うのは仕方のないことです。
そこで、サブリミナル実験に関する本や資料を探す人が何人いるでしょうか?
ググるだけでもいいです。
多分1000人に1人もいないでしょう。
あるいは「サブリミナル ウソ」とかで検索しますか?
これも上位に出てくるのは「嘘である(とした)小話」だけでしょう。
人間は考える葦であるとはよく言ったものです、
考えない葦にはなりたくないなぁと思います。
ツイッターとかでもだいたいそうですよね。
目を引くツイートがすごい勢いで拡散されて、数時間後にデマでしたっていうの。
よく見かけます。
一度深呼吸して、見つめなおす癖をつけたいですね。
私も頑張ります。
私が講座動画を作っていることの目的の一つは、
自分自身のスキルアップのためも兼ねています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ジェームズのコカコーラ実験
さて本編に入りましょう、コカコーラ実験ですね。
動画内でも述べている通り、
Pratkanis, A., & Aronson, E. (1991)によって示された情報によると、
1955年公開の映画「ピクニック」を映写しているスクリーンの上に
『コカコーラを飲め』、『ポップコーンを食べろ』
といったスライドを3000分の1秒、5分おきに提示する実験を行い、その結果
売店での売り上げがそれぞれ
コカコーラ…+18.1% (118.1%)
ポップコーン…+57.7% (157.7%)
となったとしています(1957年の話です)。
ところが1962年つまり5年ほど後に
「実験データは少なすぎるため、信頼できる内容ではない。」
と本人から訂正がなされたそうです。
(この情報は孫引きです、学術論文ではないのと面倒なので今度わざわざ表記しません。)
簡単なサブリミナル効果の説明をここで挟みますと、
サブリミナル(閾値以下の=わからない)という意味です。
簡単に閾値の話をすると、
手の上に髪の毛が落ちたら、気づきますよね。
これは閾値以上の刺激です(以上以下と慣習的に使っていますが、以上、未満が多分正しい)
手の上に空気中のホコリが当たったら、気づきませんね?
これは閾値以下の刺激といえます(刺激は0ではないが、認識できない)。
つまり閾値っていうのは、感じるか感じないかの境目というような意味合いとなります、
サブリミナル広告では、「見えるか見えないかの境目の、見えない側」
とういことになりますね
さて現在、この実験、(というよりサブリミナル効果を取り扱うことを)のちにタブーとなっています。
かつての日本のアニメにもお遊びでサブリミナル的に写真や風景などが差し込まれていたことがあったようですが、
今では放送倫理的にNGとなっています。
冒頭に、サブリミナル実験をあまり行っていないと記述した気がしますが、
「なぜなのか?」という話に移りたいと思います。
サブリミナル実験の危険性
まず一つは、「一度コカコーラ実験のような悪い例が出てきてしまった」
ために、サブリミナル効果への人びとの不信感、不安感などが挙げられます。
そしてそれに関連して二つ目
「サブリミナル実験を行うにあたり、サブリミナル提示をしていることは実験終了まで話せない」
という点です。
サブリミナル画像が差し込まれていますので…
なんて言ってしまった日には、その実験は意味をなさなくなってしまいますので、
実験後のお礼や説明のタイミングで種明かしをすることになります。
(これは多くの心理学実験において「統制」のために行われています。)
上記のような不信感(サブリミナルで暗示をかけられるとか)を強く持っている人が、
実験終了後に種明かしをされたらどうなるでしょうか、
まぁ予想は尽きますよね、「知らない間に怪しい実験で暗示をかけられた!!」
なんて言って、いろんな不幸を実験のせいにしたりされそうです。
そして、もう一つ
「サブリミナル効果に関してまだ不明瞭な点が多すぎるため、どのような影響が起きるか分からない」
というものがあります。
わかりますかね?
閾値以下の刺激を呈示して、それが行動に及ぼす影響を見る。
わけですが、
どのような行動に影響を及ぼすのか?
どの程度の影響を及ぼすのか?
が不明瞭であるため、皆さんが恐れているような
いわゆる「洗脳」状態になってしまう可能性が(少々ながら)あるわけです。
帰りに無意識にポップコーン屋さんに足が向いてしまい、車にはねられたら…
まぁ、そんなことはほぼほぼないのですが…
(「サブリミナル効果の化学」にいくつかの実験の記載がありますので、古本屋さんとかで探してみてください。)
ただ、そのような、「何が起きるのかわからないので禁止」という話を都合よく解釈すれば、
「サブリミナル効果には表向きでは効果がないとされているが、これは陰謀である」
「効果がないと証明されたものを、わざわざ禁止するでしょうか…?」
とかいうトンデモ理論が展開されるわけですね。
・効果がないなんて話にはなっていない。
・どのような悪影響を及ぼすのか不明瞭である。
この二つの知識さえあれば、こういったおかしな陰謀論に振り回されずに済みます。
(それすらも陰謀呼ばわりされて「宗教団体の手先」呼ばわりされることもありますが…)
知識とは正しく使うべきものです、知識とは生活の向上のために使うものですね。
心理学という響きを使って、わけのわからない陰謀を作らないでほしいなぁというのが本音です。
引用文献
Pratkanis, A., & Aronson, E. (1991) Age of Propaganda: The Everyday Use and Abuse of Persuasion. W H Freeman & Co.
坂本 章・森津太子・坂本 桂・高比良美詠子 (1999). サブリミナル効果の化学‐無意識の世界では何が起こっているか‐ 学文社.
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