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ゆかりさんと学ぶ心の科学入門 その2 「プレグナンツの法則」の補足


それでは今回も解説を行っていきます。
一応個人的なメモですが、これを執筆開始したのは2月23日です。

本編動画はこちらです。
ゆかりさんと学ぶこころの化学入門 その2


プレグナンツの法則


前回のブログで述べたヴェルトハイマーは、人間が形態(ゲシュタルト)を知覚するときの法則を考え、
「プレグナンツの法則」を考案しました。
プレグナンツは「簡潔さ」という意味です(おさらい)。
ヴェルトハイマーは視覚に関してのみの方略として発表しましたが、
このことは学習、記憶などの様々な思考方略にも当てはまることがのちに紹介されています。

視覚に関してはこの後紹介するとして、学習や記憶ですね。
皆さん、平方根の話って覚えてます?
√2(ルート2)って1.41421356…ですけど
多分皆さん「一夜一夜に人見ごろ」って覚えてるんじゃないでしょうか?
これも、数字を覚える時に使う「簡潔さ」ですよね。
つまり、意味のない数列に対して「語呂合わせ」をすることで、連想をする「簡潔さ」が手に入るわけです。
Baseballを「ばせば11」と覚えるようなものです。
他にも歴史の年号の覚え方、理科では元素記号の覚え方などで、
いろいろな方が記憶の一助として使ったのではないかと思います。
この「連想」という考え方は思考方略を考える上で、非常に大切なセンテンスとなっていきます。

さて、思考方略で指すところの簡潔さ、これは「圧縮」にあると考えます。
10, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000, 000
なんていう数字があります、「1グーゴル」という単位になり、無量大数より上の桁になります。
毎回ゼロの数を数えていてはお話になりませんね。
なので圧縮します、「10の100乗」です。
知識として「10の100乗=1グーゴル」であることを知っていれば、
1を1個と0を100個の101桁の整数を頑張って数えなくても
10¹⁰⁰(←「10の100乗」表示できてますか?)だけで済むのです。
もちろん、「単位」という概念も圧縮といえるでしょう
これはこれは「簡潔」になりましたね。
簡潔にすることで、記憶にも残りやすくなりますし、処理も簡単になります。
簡潔さを与えることにより、より人間の思考力は進化しいていくわけですね。

グーゴルという言葉を聞いて何か思い出した方もいるのではないでしょうか?
「google」ですね。
これは「googol(グーゴル)」のスペルミスによって生まれた名前だそうです。
(どこかの国では「グーグル」を「グルグル」と発音するようですが…)

さて、視覚の話に戻りましょう。
このプレグナンツの法則、教科書によっては「群化の法則」と書かれていたりもします。
非常に別名の多い法則なのです。
群化というのは「おのずからまとまって見える」という意味です。

動画内でも述べましたが、結構たくさんの要因がありますのでざっと述べていきます。

・近接の要因
・類同の要因
・閉合の要因
・よい連続の要因
・よい形の要因
・共同運命の要因

などなど、これは言葉で説明するのには無理がありますので動画を見ていただくといいと思います。
簡単に言えば、
「こういう感じになってると、ここがまとまりっぽいよね。」というだけのお話です。

・・  ・・  ・・  ・・
近接の要因

・・@@・・@@・・@@
類同の要因

]  [  ]  [  ]  [  ]  [  ]   [
閉合の要因

この辺は文字でも紹介しやすいですね。

動画で紹介された他の心理学者


動画内ではヴェルトハイマーの他にドイツ人のゲシュタルト心理学者を何人か紹介しました。
ゲシュタルト心理学はその名前の通り(皆さんに通じるかはわかりませんが)ドイツ発祥の心理学です。
そのため、このころ(黎明期)の研究者は必然的にドイツ人が中心となります。
他にも実験心理学やその他の分野の研究者として
「内観(自己観察)」でおなじみの、ヴィルヘルム・ヴント(Wilhelm Maximilian Wundt)
「太陽を肉眼で観察し失明しかけた」逸話を残す、グスタフ・フェヒナー(Gustav Theodor Fechner)
「ミュラー・リヤー錯視」でおなじみの、フランツ・カール・ミュラー・リヤー(Franz Carl Müller-Lyer)
等が有名です(基本的に下線部で呼ばれます)。

それでは、今回動画内で紹介されたゲシュタルト学派の心理学者たちの簡単な紹介をしていきましょう。

ヴォルガンフ・ケーラー (Wolfgang Köhler) は
1929年に曲線で作られた模様と直線で作られた模様を提示し、
(下画像のようなイメージです)


「どちらを『タケテ』、どちらを『マルマ』と名付けますか?」という問いをしました。
結果は書籍にはしっかりと書かれていなかったようですが、
とげとげを「タケテ」、曲線を「マルマ」と呼ばれたようです。

その後ヴィラヤヌル・スブラマニアン・ラマチャンドラン(Vilayanur Subramanian Ramachandran)による
「どちらを『ブーバ』、どちらを『キキ』と名付けますか?」
という追試験(Ramachandran & Hubbard, 2001)をインド人に行った結果、
ケーラーの説に他の国においても整合性があるとして、形と名前の関係性を「ブーバ・キキ効果」と名づけました。
尚、「大脳皮質角回」に損傷があったり「自閉症」であったりする場合には同じ結果が得られなかったそうです。
ちなみにこちらの実験ではとげとげがブーバ、曲線がキキと大多数に呼ばれたそうです。
と聞くとよくわからないかと思いますが、
オノマトペ(擬声語)の音韻のイメージが、形にある程度関連性がある。
というものです。

ちなみにですがラマチャンドラン(髭のナイスガイ)は
失ったはずの左手が痛む、といったような幻肢痛の治療法である、
ミラーボックスを考案した人物として有名です。
鏡に映した右手(見た目は左手)を見ながら治療を受けることで、
失われた左手の幻肢痛を治療する、というやつですね。
まさに原始的かつ天才的な発想といえるでしょう。

クルト・コフカ(Kurt Koffka)はゲシュタルト心理学を発達心理学に応用した人物です。
「Principles of Gestalt Psychology(ゲシュタルト心理学の原理) (1935)」により、
英語圏に向けてゲシュタルト心理学を広めました。
ケーラーやヴェルトハイマーと共にゲシュタルト心理学の確立に努めたわけですね。

クルト・レヴィン(Kurt Zadek Lewin)はゲシュタルト心理学を社会心理学に応用した人物です。
「行動は生活空間の関数である」とした、トポロジー(位相)心理学を提唱しました。
「人は達成できたことよりも、達成できていなかったり中断している事柄の方をよく記憶している」
というツァイガルニク効果(Zeigarnik. 1927)の元となった考えを提唱した功績があります。
「社会心理学の父」とも呼ばれています。

ナチスとユダヤ人


彼ら4人のうちケーラーを除いた3人はユダヤ人であるため、
全員がナチスに迫害されアメリカへ亡命しています。
ケーラーは非ユダヤ人でしたが、コフカやヴェルトハイマーの考え方に賛同し
共にアメリカへと向かい研究をつづけました。
「偉大なる研究者を人種差別によって失うところであった。」
という事実は是非皆様にも覚えておいていただきたいです。
ゲシュタルト心理学は、今日の多くの心理学に影響を与え、新たな知見をもたらしました。
自然主義的・実験主義的なアプローチの導入はゲシュタルト心理学から始まったものです。
(研究者だから生かしておけ、などと言う話はしておりません。)

昨年の年末(2019年12月28日)にも
“英ロンドンで反ユダヤの落書き、店舗やカフェに”、とBBC NEWS JAPANが報じています。
差別意識を持つべきではないとは言いません、
その意識は行動に移すべきではない、と私は考えています。

先に紹介したgoogleの創設者の一人ラリー・ペイジの母親もユダヤ人です。
私なんかよりも1グーゴル倍価値のある人間だと言えるのではないでしょうか?


引用文献


Koffka, K. (1935). Principles of Gestalt Psychology. Harcourt, Brace.
Köhler, W. (1929). Gestalt Psychology. Liveright.
Zeigarnik, B. (1927). Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen. Psychologische Forschung, 9, 1-85.
Ramachandran, V.S. & Hubbard, E.M. (2001). "Synaesthesia: A window into perception, thought and language" . Journal of Consciousness Studies. 8, 12, 3–34.

BBC NEWS JAPAN
https://www.bbc.com/japanese/50953882

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